出発の朝は、日の出とともに目覚めた。

こんな状況の中でわざわざ役所へ出勤し、朝9時に交付される辞令を受け取るのが嫌だった僕は、必死の思いで上司を説得し、早朝出発の了承を得ていた。

しかしあれは夢ではなかったか?

今日の9時になって「アイツ、どこへ行ったんだ!」とかいうことになったりしないだろうな?
起き抜けの混濁した意識の中で、記憶がやや曖昧な僕の目覚めは、決して快いものではなかった。
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世界を揺るがす大事件!
一刻を争う超緊急事態!!
国家レベルの重要任務!!!

・・だというのに、辞令は朝の9時に受け取ってから行けだとか、役所というのはとにかく慣例墨守主義、スピード感もへったくれもあったものじゃない。

僕だって他人のことを言えた義理じゃないが、少なくともそんなくだらない慣習に背を向けていられる程度には、世間のことを分かっているつもりだ。

もっとも、そんなのはただの自己満足だって、一般国民にはバレバレなのかもね。

僕は自嘲するようにフンと鼻を鳴らし、起き上がって服を着た。

朝食はパンとヤギの乳だけの簡単なものだ。
まったく、簡単すぎてため息が出る。

本当は4月1日から、僕の食事はこんな廃れた貧相なエサとは比べ物にならないくらい、華やかで豪勢なものになるはずだった。

今回の任務担当者に充分な滋養を確保するものとして、補正予算に計上された多額の食費相当額は、一体だれの懐に入ったんだ?

少なくとも僕の胃袋に入ったおぼえはない。

当初、今回の任務の辞令は4月1日付と決まっていた。

僕はその日から特別に設けられた新部署へ異動し、任務遂行の準備に専念しつつ、今日という日を迎えるはずだったんだ。
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